はじめに
私は新卒で国家公務員になり、数年勤めた後コンサルティング会社に転職しました。
入ってしばらくして、同じく国家公務員から私のいるコンサルティング会社に転職しようか迷っているという男性に、同じルートを辿った先輩として話をしてやって欲しいと会社から言われお話をする機会がありました。
その会話の中で、「リスクの考え方って、人によってこんなに違うのか」と驚いたことがありましたので紹介します。
男性の質問と私の答え
その男性曰く、
とのこと。
それに対する私の答えは次のとおりでした。
二人の発言から見る考え方の違い
私の答えを見てどう思われただろうか。彼の質問に対する答えになっていないと感じた方もいるだろうか。
申し訳ないことに、それは実際その通りだと思います。彼と私のリスクに対する考え方が違いすぎました。
彼は「変化(クビになること、実力で給与が変わること、新しい知識を学ばなければならないこと)」をリスクと捉え、「変わらないこと(クビにならないこと、給与の上昇が一定であること、既存の知識で足りること)」を求めた。
対して私は、「変われないこと(ビジネスの経験を積めないこと、転職したい時にできないこと)」をリスクと捉え、「変化(転職の可能性、新たな知識)」を求めた。
考え方が全く違う。話が噛み合わないのも当たり前です。
しかし、噛み合わないのは承知で私は上記のような答えをしました。コンサルタントとしてやっていくなら変化への対応は避けられない、不変に安心感を覚えるメンタリティが変わらないのであればコンサルは向いてないと思ったからです。(別に彼が劣っていると言いたいわけではなく、向き不向きの問題です。)
ちなみにその後、彼は元の職場に残ることを決めたという話を聞きました。
変化はリスクかチャンスか
なんでこんな話をしたかというと、皆さんにぜひ「リスク」についてもう一度考えて欲しいからです。
上記の例は個人のキャリアについての話ですので、人それぞれ正解があり、どちらの考え方が正解ということはありません。公務員の方が、職を失い貧しい生活をするリスクが低いのは間違いありませんしね。
しかし、事業におけるリスクという観点から見れば、「変わらない」ということは大きなリスクだと考えています。
人間心理として、変化に不安を覚えるのは当然です。変わらなくても良いのであれば、わざわざ苦労して、失敗するリスクを犯して新しいことに挑戦しようとはなかなか思えません。
しかし、「変わらない」ことを選ぶのは、緩慢な死への第一歩だと私は考えています。本能的には変化を怖れてしまうとしても、その本能に抗って、変化を求めて行かなければ必ずジリ貧になります。
今の株式市場の時価総額ランキングを見ても、アルファベット(google)やAmazonなどの、常に新しい事業にチャレンジを続けている会社が上位に来ています。
一方で、長年に渡り変わらない製品を売り続けて来たコカコーラやフィリップモリスなどは、かつては時価総額トップ10に入っていたものの、ここ数年の株価の伸びは低調です。
この2社はいい方で、かつて隆盛を誇っていながら変化への対応に失敗して事業が大きく縮小してしまった企業や倒産した企業は沢山あります(有名なところではコダックとかですね。)。
そして変化というのは、求められたら急にできるものでもありません。常日頃から「変化癖」をつけておかないと、いざ変化が求められた時にもどう対処していいか分からず変化の荒波に飲まれてしまいます。
なのでぜひ、たとえ今日事業が順調だったとしても、そこに安住することなく、新しいチャレンジを積み重ねてください。失敗したり損をすることもあるでしょうが、長い目でみれば、そのチャレンジの積み重ねが必ず身を結ぶ時が来ます。
参考書籍
イノベーションのジレンマ
既存事業の延長でしか事業を考えなかった優良企業が、新しい技術により駆逐されていく例とその理由の分析が沢山載っています。
反脆弱性 ――不確実な世界を生き延びる唯一の考え方
リスクへの対応力を、変化に弱い「脆弱」、変化をしない「頑健」、変化をメリットに変える「反脆弱」の3つの観点から論じた本。リスク=ボラティリティ、という従来の考え方を変える新しいリスクの考え方への示唆が得られます。