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「いい失敗」のコツ③致命傷を避ける

繰り返しになりますが、失敗は次に活かしてはじめて意味があります。

しかし、もし失敗から多くの教訓を得たとしても、その失敗による損失が大きすぎて次のチャレンジの資金がなくなってしまったり、倒産してしまっては、次のチャレンジをする機会は得られません。

なので、失敗した場合でも次のチャレンジにつなげられるよう、リスクをコントロールする必要があります。

リスクコントロールにあたっては、
1.先行投資は最小限に抑える
2.失敗を潔く認め、素早く手を引く
の2つの点が重要です。

1.先行投資は最小限に抑える

具体的には、

  • 在庫をたくさん抱える
  • 人員を事前に大量に採用しておく
  • 人員増を想定して広いオフィスに移転する

などの見切り発車は避けましょう。新製品の開発に必ず必要な機器の購入などは事前に行うしかないと思いますが、その場合にも数を抑えるなどの方法でリスクをコントロールしましょう。

他にも、サラリーマンから独立する場合に、ある程度自分の事業の目処が経ってから会社を辞める、というのもリスクコントロールの重要な要素ですね。

「在庫や人員を抑えたら、もし新製品やサービスがヒットして買い手が殺到しても対応出来ず、機会損失を生むじゃないか。」という反論もあると思います。

しかし私は、このような機会損失は必要悪だと思っています。勝負をかけるべき時は、自社の製品・サービスに対してニーズがあることを実際に確認できた時です。売り切れるほどのニーズが確認できた後で、そのニーズに応えられるように生産体制や人員を拡大してください。ニーズが確認できる前に、アイディアの段階で大きな投資をして、失敗した時に取り返しがつかなくなるような事態は避けてください。

「必ず成功する投資」なんてものはないのです。やってみなければ分からないことが必ず起きます。どんなにうまくいく算段がたっていたとしても、「うまくいかなかった場合立ち直れるか?」という視点を忘れないようにして下さい。

2.失敗を潔く認め、素早く手を引く

新しいアイディアに対し、顧客のニーズがないことがわかるなど、失敗であることがわかったら、潔く諦めましょう。株式投資でいうところの「損切り」が大切です。

前回書いたように、成功させるために手を尽くさなくてはなりませんが、失敗の可能性が濃厚で、成功の確率に対してリスクが大きくなってしまっているならば、手を引くべきです。

いつまでは粘るべきで、どのタイミングで引き下がるべきかは、ケースバイケースとしか言えない難しい問題ですので一概には言えないのですが、売れないのは広報が足りないからだと判断し大規模な広報を打ったり、値段をどんどん下げていくうちに、失敗のコストはどんどん増え、いつしか「致命傷」に至ります。引き際を見極める上では、「いつまでなら致命傷にならずに済むか?」と考えてみることが重要です。これ以上粘ったら致命傷になる、というところまで来たら、手を引くべきです。

また、引き際を適切に見極めるためにも、前回述べたように、「きっと成功する」という楽観視は避けるべきです。

成功を信じて疑わないでいると、失敗した時に失敗を認められなくなります。「そんなはずはない」と言って、現実が直視できなくなります。失敗を認識して適切に手を引くためには、つらい現実を客観的に見て、ドライに判断を下すことが大切です。

損切りの難しさを認識する

失敗だとわかったら損が大きくならないうちに手を引く。こんな当たり前のことをなぜわざわざ説明しているかと言うと、この論理的には当たり前のことが心理的にはめちゃくちゃ難しいからです。

ある事業に投資をしたところ、損失が1000万になった場合、「これは上手く行く見込みはなさそうだ。諦めよう。」と考えられる人は稀で、「今諦めたらこれまで費やした1000万が無駄になってしまう。これだけ投資したのだからなんとしても成功させなければ。」と考えてしまうのが人間の心理です。そして、費やした費用が2000万、3000万と大きくなっていき、ますます後に引けなくなるのです。

この心理に対抗することが大切です。
そのためには、少し別の視点で考えてみましょう。「この事業にさらに100万円投資すべきか、やめるべきか?」ではなく、「この事業と他の事業、どちらにこの100万円を投資すべきか?」とかんがてみます。そうすると、投資資金100万円をどう活用するのが最も効果的か、という未来志向の考え方に切り替えられ、過去の損失にとらわれない判断を下しやすくなります。

このパターンに限らず、頭ではどうしたらよいかわかっているものの、心理的・本能的にその通りにできない、ということはよくあります。そのような時には、自分の心理状態に目を向け、何が引っ掛かっているのか、その引っ掛かりをほどくためにはどのように物のとらえ方を変えたらよいか考えてみると、ブレイクスルーを生むことが多いです。少し抽象的な話になってしまいましたが、そのうちもう少し詳しくお話しできたらいいなと思っています。

まとめ

・一度の失敗ですべてを失うことがないよう、可能な限りでスモールスタートする。
・失敗だとわかったら、素早く手を引く。その際、心理的抵抗が生じることを理解し、向き合い、解消する。

本日はこの辺で。

ABOUT ME
nuk
理論を学ぶだけでなく、実際に使ってみる、実践型経営コンサルタント。 東京大学法学部卒業後、キャリア国家公務員になるも、ビジネスで身を立てるため現職へ。