「株式投資の未来」という本がある。株を(ある程度本気で)やってる人なら誰もが読んだことがあるような本で、配当再投資の重要性や成長株の危険性に関する記述が有名。
この本の中で、過去数十年でリターンの大きかった株の銘柄20位までが示されていて、そのほとんどがアボットやファイザー等のヘルスケア株かコカコーラ等ブランドの強い消費財メーカーの株だとしている。
ここから読み取れることは、過去50年において強い「経済的な濠」の形は、特許(ヘルスケア株)とブランド(消費財メーカー)だったということだ。
しかし近年、ヘルスケア株と消費財メーカー株は奮っていない。
メルクやファイザーは新薬の開発に苦労している。開発できなければ特許も意味がない。
消費財メーカーも、製品のパフォーマンスに基づくブランドはともかく、CMなどのイメージだけに頼ったブランディングは、プライベートブランドの増加や、ネットの口コミによって製品のパフォーマンスについて消費者がよりアクセスしやすくなったなどの理由により、昔ほどの威力を発揮しなくなってきている。
では、今台頭している企業はどうやって「経済的な濠」を使っているのか。答えは「ビジネスモデル」だ。
その中でも特に「ネットワーク効果」利用したものが強い。たとえばアップル。アプリ開発会社は、iPhoneをみんなが持っているという理由から、iPhoneで使えるアプリを開発する。消費者は、色々なアプリが使えるからiPhoneを買う。みんなiPhoneを持っているので、アプリ会社はiPhoneアプリを開発する。そういう好循環が発生する。
もしiPhoneに対抗しようとスマホ市場に参入してきた企業がいたとしても、厳しい戦いを強いられるだろう。使えるアプリが全然なかったら、どんなに見た目がオシャレでもそのスマホは買わない。誰も買わないスマホのアプリを開発しようとは誰も思わない。本気でやろうと思ったら、最低限のアプリを自前で揃えてからスマホをリリースしなければならない。このハードルは相当高いだろう。
ビザやマスターカードなどのクレジットカード会社も同じだ。使えるカードが多いから人はビザやマスターカードを持つし、持っている人が多いから店もビザやマスターカードで決済できるようにする。誰も持っていないカードで決済させようとする店はない。
Amazonにも同じことが言える。Amazonでみんなものを買うのは、Amazonに商品が揃っているからだ。出品者がAmazonで出品するのは、そこに買い手がいるからだ。
こうした、ビジネスモデルで「経済的な濠」を作れば、特許のように期限切れを気にする必要はない。年々強くなる場合すらある。
強いビジネスモデルを考えるのは面白い。パズルのようだ。
ただ、未だにビジネスモデルに関して「これだ!」と思える本に出会えていない。「ビジネスモデル50」とか、色んなビジネスモデルを羅列したものが多く、体系がいまいちわからない。何かいい本があったら是非教えてください。